タッチキーのニーズが急拡大中!

スタイリッシュな組み込み機器に欠かせないタッチキー。デザイン面だけではなく、実用的な面からもタッチキーのニーズは高い。タッチキーを搭載することで、可動部品を用いずにパネル下の電極を介して、スイッチのオン・オフや増減を指示できる。そのため、防滴性と防塵性が大幅に高まる。従来では、使用が困難であった環境にも対応可能になり、組み込み機器の新たな市場を生み出している。さらに、複数の指で同時にタッチする高度な操作もぞくぞくと登場し、いまやタッチキーは、組み込み機器に欠かせないHMIと言えよう。

 

タッチ検出方法

タッチキーにおいて、電極の扱い方には2種類ある。1つの電極で容量変化を検知するのが自己容量方式で、2つの電極間の相互の容量を用いて検知するのが相互容量方式だ。

自己容量方式は、電極の構造が単純で感度も良くタッチパネルの設計を簡単に出来るが、難点もある。指による静電容量の増加を検出しているため、静電容量を増加させる水滴などがパネルに付着すると誤動作する事がある。また、1キーに付きタッチ検出端子を1本使用するためキー数に制約がある。

一方、相互容量方式は、対(つい)にした電極を使う。一方を送信電極、もう一方を受信電極として送信電極からパルスを送信して電極間に電磁界を発生させる。指が電極に接近した時にその電磁界が指に逃げる特性を利用してタッチ検出する。水滴がパネルに付着しても電磁界は減らないので、耐水性が高いタッチキーを作る事が出来る。また、送信電極と受信電極を格子状に配置して多数のキーを構成出来る。例えば4本✕4本のタッチ検端子で16個のキーを構成出来る。ただし、自己容量方式に比べ電極の形が複雑でパネル厚にも制約がある。

 

タッチキーシステム解説

 タッチキーの実現には、静電容量の変化を検知することから、アナログ回路の要素が必要だ。タッチを検出する電極部分のパターン設計にはノウハウ(勘所)がある。また、アナログ部分とデジタル部分の分離や、ノイズの影響防止など、アナデジ混在回路につきものの難しさが出てくる。タッチキーの高まるニーズとその成果は期待できるが、実際に採用するにはハードルが高いと思われてきた。

そこで、ルネサスではタッチキー向けに、必要なアナログ回路を搭載した専用マイコン(RX113)を提供している。そのマイコンの内部回路を例にして、タッチキーシステムを解説しよう(図1)。

 相互容量方式、自己容量方式いずれであっても、電極を用いて静電容量の変化を検知することは同じだ。静電容量の微妙な変化を検知するため、ルネサスはスイッチドキャパシタフィルタ方式を採用している。これは、静電容量の変化を電流の変化に転換する回路方式だ。静電容量を安定して測ることは難しいが、電流の変化であれば容易に測定できる。続いて、電流の変化を発振器で周波数の変化に転換する。周波数の変化は、最終的に数値で得られるので、デジタルとの相性も良い。

図1:CTSU(Capacitive Touch Sensor Control Unit) 構成

 

以下、順番にシステムの動作を解説する。

  1. 指が電極に近づくとI/O Driver(左下部分)から流れ出す電流が変化する。
  2. この「電流の変化」を電流発振回路(ICO:AFE内水色部分)が「発振周波数の変化」に転換する。
  3. 発振周波数を知るためには、パルス数を数えればよい。計数を担当するのはAFEの右側に描かれたDigital Control部分だ。ここで一定時間内に得たパルス数のカウントや保持を行っている。
  4. 計測が終わる度に、結果はCPU Unit(図中右下)のRAMに転送される。
  5. ソフトウェアは、RAMの指定領域にアクセスして、そこに書かれた値の変化から「発振周波数の変化」を知ることができる。これは、「静電容量の変化」を「電流の変化」に姿を変えたものであるため、自己容量方式または相互容量方式のいずれかの計算アルゴリズムを適用してタッチがなされたかを判断する。

 

システムのポイント

このシステムでは、静電容量の変化がカウント値の変化として現れるまで、ルネサスがCTSU(Capacitive Touch Sensing Unit)と呼ぶブロック内ですべてを処理していることが大きなポイントだ。ソフトウェアは、RAMに書かれたカウント値を読み取るだけでよく、静電容量検出のためにプログラムを動かす必要が無い。

ルネサスでは、CTSUを駆動するためのソフトウェアと詳細な設定データを提供しているので、開発者はAPIを呼び出して、容易に設定や調整が行える。また、電極の形状設計、配置、配線に関わるデータも公開しているので、勘と経験ではなく、マニュアルに沿った作業で安定して動作する電極を作成可能だ。

 

ルネサスのタッチキー開発ソリューションの詳細はコチラから:

Ÿ   RX113マイコンの概要

Ÿ   静電容量式タッチセンサシステム (第2世代タッチキー技術)

Ÿ   アプリケーションノート「RX113 Group CTSU 静電容量タッチ検出の基礎」

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