uIP TCP/IPについて

先ごろ(だいぶ前ですが)ルネサスサイトから uIP TCP/IP Protocol Stack Demostration Document number:R01AN0169EU0100 Ver 1.01 NOTEs: * The demostration directory structure is explained in the application note. * This application note supports RX62N and the demostration project runs on RSK+RX62N. UIPのサンプルを入手しましてSH7670へ移植しました、その結果とても良好な結果を得ましたので報告します 自前のソースでTCP/IPを実装して稼動させていましたがよく応答ができなくなったりしていました いろいろな遷移状態でわけがわからないような(たぶんプロトコルが十分でない)遷移もありました UIPにすると必ず応答して、応答不良などまだ経験がありません、 ただこのUIP長い(大きい)データ転送には弱いんです、”どうしてこんなに時間がかかるの”というぐらい なにか説明ではACKが200mセコンドウェイト方式を採用しているからだとか これの速度はもっと速くはならないものでしょうか? IWIPなど聞きますが、UIPと比べてどうなのでしょうか、IWIPのほうがいいのでしょうか?
  • こんにちは、ルネサスマイコン(RXマイコン中心ですが)でTCP/IP関連をいろいろ実験しておりますシェルティと申します。

    TCP/IPですが、複雑怪奇な仕様であり、スクラッチ開発となると相当な難易度ですね。

    実験/研究レベルならスクラッチ開発もありかもしれませんが、量産製品に適用となると、

    第一にネットワーク関連ソフトを組み込みマイコン向けに製品化しているソフトウェアハウス製のものがおすすめです。

    例えば、図研エルミック殿やデータテクノロジー殿、ユビキタス殿などの組み込み用TCP/IPが有名です。

    ルネサス製でも組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tinyというのが有償製品として提供されています。(SH2A用の無償ダウンロードもあるようです)

    http://japan.renesas.com/mw/t4

     

    第二に組み込み用OSに内包されているTCP/IP機能を使うのも良いです。

    (ここでいう組み込み用OSはリアルタイムOSではなく、組み込み用Linuxを指します)

     

    第三にuIPやlwIP等のオープンソース系のコードを頑張って量産製品に適用する道です。

    第四にスクラッチ開発でTCP/IPを手作りする道です。

    第三・第四の道は技術力に自信が有る場合におすすめですね。

    安く仕上げられるというメリットも捨てがたいと思います。

    -------

    さて、uIPで大きいデータ転送に弱い件ですが、uIPのTCP処理の実装に問題があります。

    lwIPでも私が調査した限り同様の問題を含んでいます。

    組み込み用TCP/IP M3S-T4-TinyもRXマイコン用パッケージにて、最近ソースコードが公開されたので中の実装を確認したところ、

    uIPやlwIPよりはマシですが、もう一段の改善が必要といったところです。

    各TCP/IPを比較すると以下の通りです。

    uIP or lwIP : TCPの送信アルゴリズムが貧弱。データ送信1回につき1個のACKが戻ってくることを期待している。

             多くの一般的なTCP/IPはTCPデータ受信時は2個データを受信する or 1個データ受信し200ms経過後タイムアウトしACKを返す実装になっている。

             その結果、毎回タイムアウトが発生し1秒に5回のデータ転送しか実現出来ない。

    組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tiny : TCPの送信アルゴリズムが少し貧弱。データ送信は2個セットでACKが戻ってくることを期待している。

             多くの一般的なTCP/IPはTCPデータ受信時は2個データを受信する or 1個データ受信し200ms経過後タイムアウトしACKを返す実装になっている。

             その結果ACKがすぐ戻ってくるネットワーク環境(LAN)においては転送速度に問題は発生しないが、

             ACKがすぐに戻ってこないネットワーク環境(WAN)においては転送速度がACKが返ってくる時間に律速する。

             ACKが返ってくるまで200msかかる(東京-北米西海岸等)通信をする場合は、uIP or lwIPと変わらない程度の通信速度に落ちる。

             ※ローカル環境ではSH7216@200MHz で、TCP送受信が60Mbps程度出せることを確認しました。(RX62N@100MHz では30Mbps程度確認)

    -----

    これは組み込み用TCP/IPが多くの場合、RAM容量に制限の多いマイコンでの動作を期待しているため、

    送信用/受信用のバッファを多く持たないことに起因します。

    TCPの規格上、お互いに受信用のバッファサイズ(受信ウィンドウと呼ばれます)を常にTCPヘッダの特定16bitエリア(0xffff=最大64KB)に載せて

    通知し合っているわけですが、上述したTCP/IPたちはここにTCPパケット1個分(=1460バイト)の容量を設定しているのです。

    #組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tinyではここが可変になっていて柔軟にチューニングが効くようにはなっています。

    その上、送信アルゴリズムも上述した通り貧弱ですのでいずれにしても大きなデータ通信には向きません。

    -----

    長くなりました。

    結論ですが、量産製品にTCP/IP機能を付ける目的であれば、有償のTCP/IP製品をお求めになるのが良いかと思います。

    とにかくまず実験して感触を掴んでみたい/通信速度が気になる/LANでしか通信しない、ということであれば、

    SH2A用の組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tinyを使って実験されるのが良いかと思います。

    ただ、ソフトは無償ダウンロードがありますが、SH7216の評価ボードとE10Aエミュレータが必要となり、ちょっと実験してみるのには敷居が高そうですね。

    (TCP/IP処理部分はSH7670でも動作するでしょうけれど、サンプル全体がSH7216用に作られているため、

     Etherドライバ付近とボード周りの設定プログラム、スタートアップ等を調整してあげる必要はありそうです)

    もちろん、せっかくuIPをSH7670に移植されたのですから、大きなデータ通信については目をつむり、そのまま使用し続ける案も十分に有りと思います。

    以上です。

     

     

  • すみません、少し書き漏れました。

    一般的なTCP送信アルゴリズムは、「通信相手の受信ウィンドウサイズに空きがあればACKが返ってこなくてもお構いなしに送信する」です。

    このように実装するためには、通信相手の受信ウィンドウサイズの最大値(0xffff=64KB)の容量の送信バッファが必要です。

    しかも、通信相手が複数同時に居る場合は通信相手の数分だけ64KBの送信バッファが要ります。もちろん受信ウィンドウも要ります。

    従って、多くの(オープンソース系)組み込み用TCP/IPは多くのマイコンで動作させることを優先し、

    バッファサイズを制限し通信速度を犠牲にしたのだと思います。

    組み込みソフトを専業でやっているソフトウェアハウスのTCP/IPの場合、この辺りが柔軟に設定できるものがあると聞きますので

    本格的に量産製品を作られる場合は一度ソフトウェアハウスに相談してみるのが良いかと思います。

     

     

  • シェルティ さん

    回答ありがとうございます、

    なにか、今一番必要なことを教えられた気分です、なるほど

    要約すると、組み込み用の多くのTCP/IP機能は組み込み用に特化するため

    大容量、高速通信を犠牲にして作成されているということでしょうか

    できればUIPでも動作している環境ですので、なにか設定を変更するなどすれば

    高速になることも期待したりもしたのですが、基本的なところの設計が違うということなのでしょうか、

    このプロジェクトはまだ量産の段階ではありませんので

    その段階になりましたら、さしせまってきたらソフトウェアハウスに相談してみたいと思います。

  • シェルティ さん

    その前に

     ※ローカル環境ではSH7216@200MHz で、TCP送受信が60Mbps程度出せることを確認しました。(RX62N@100MHz では30Mbps程度確認)

    が結構早い?

    組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tinyというのが有償製品として提供されています。(SH2A用の無償ダウンロードもあるようです)

    http://japan.renesas.com/mw/t4

    これ今日ダウンロードしましてインストールさせていただきました。(SH2A用の無償ダウンロードもあるようです)

    これからはこれを使用することに切り替えたいと思います。

    シェルティ さん有益な情報ありがとうございました。

  • IKUZOさん

    私の情報が少しでも役に立てたようで嬉しいです

    私は組み込み用TCP/IP M3S-T4-Tinyに関してはそこそこ詳しくなってきましたので、

    通信速度性能測定などで思ったように性能が出ない、等ありましたらご連絡ください。

    アドバイスできることがあるかもしれません。

    #IKUZOさんがSH7670に移植されたuIPもとても良いと思います。設定で通信速度改善出来ないかuIPのコードを見てみます。何か分かったら連絡します。

  • シェルティ さん

    ほんとうに心強い思いです、自分一人で悩んでいたところで、かふぇルネから助けられた思いです

    「TCP/IPですが、複雑怪奇な仕様であり」とありましたが、この言葉にはなぐさめられました、苦労してきましたから

    シェルティ さん、これからもよろしくお願いします。

  • シェルティ さんお世話になります

    an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample のフォルダ

    Ether.hws でコンパイルすると下記エラー発生なのですが

    何かdefine する必要がありますか?

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_t4_itcpip.h(75) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_stdint.h(25) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_t4_itcpip.h(75) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_stdint.h(25) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_t4_itcpip.h(75) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_stdint.h(25) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_t4_itcpip.h(75) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

    Phase: SH C/C++ Compiler, File: SH C/C++ Compiler, dependency scan error

    C:\Dev\BASE\T4\sh2a\an_r20an0050jj_sh2a_t4_v106r00\sample\src\t4\lib\r_stdint.h(25) :  DC201 (E) A header file does not exist 'stdint.h'

  • 申し訳ありません

    エラーのようなものは出ることには出ますが

    ビルドはできました、H8S等もやってみましたが

    正常に出来ました、

    これから導入いたします。

  •  エラーの出ているヘッダファイルの中に include 'stdint.h' と書いてありませんか。

     その 'stdint.h' が見つからないと言うエラーだと思う。

  • IKUZOさん、リカルドさん

    こんにちは、シェルティです。

    エラーについて少し調べてみました。

    エラーはDependencyのチェックのエラーで、コンパイルのエラーではないですね。

    Cコンパイラのプリプロセッサが動く前に#includeで指定されているファイルの有無をチェックしており、

    #ifdef で括られた部分のヘッダファイル「stdint.h」が無いというエラーが出力されていました。

    以下のコードの「★ここでDependencyエラー検出」というところでエラーが出てますね。

    #if defined(__RX)
    #include "stdint.h"            // ★ここでDependencyエラー検出
    #else
    #include "r_stdint.h"
    #endif

    T4ライブラリはルネサスマイコン全般で使えるようにしてあるようで、

    ヘッダファイル(r_t4_itcpip.h)では種々マイコンのプリデファインマクロとITRONの使用有無のマクロで

    標準型定義が切り分けられているようです。

    __RXはRXコンパイラがコンパイル時に自動的に定義してくれるマクロ名ですね。

    以上です